今とは違って、大きな国道以外は舗装が行き届いていない時代、殆どが砂利道でしたので、夏の夕方になると、家の前に涼を取るために水を撒くことがよくありました。打ち水というやつです。子供の頃、お手伝いと称しては、ブリキのバケツに入った水を柄杓で掬っては、友達と掛け合いっこをしてよく親に叱られました。上から下までずぶ濡れ、よくても足元は掛かった水と砂でドロドロになっています。散々水掛けで遊んだあとは、汗を流しに近くの銭湯に出掛けます。
幼い頃は、向かい合わせの長屋に住んでいましたので、銭湯から帰ると、ご近所のおじさんたちが、ビール瓶やコップを持って出てきます。長屋の間の路地には縁台がひとつ置いてあって、そこで早めの晩酌がはじまるわけです。今思うと、どこのお父さんも早くに帰宅されていたことに驚きます。大工さんや左官屋さんと言った職人さんが多かったせいかもしれません。
縁台のおじさんの周りには、酒のつまみの枝豆やスルメを求めて子ども達が群がりました。その姿も、男の子はランニング、女の子はシミーズ(今で言うとキャミソールですかね?)という下着姿。恥ずかしいなんていう気持ちはありませんでした。幼かったからかもしれませんが、それがお風呂上りには一番気持ちの良い恰好だったから。今では考えられない光景です。
そのまま花火大会に突入することもありましたし、銀盥を持ち寄って、金魚すくい大会が開催されたこともありました。掬う子どもと、破れない網(?)を必死に作る親。
こんな風に、何かがはじまるのは、すべておじさんたちのご機嫌次第。突然何かが始まるかもしれない期待感にいつもドキドキしていた記憶があります。
夏の日暮れは、懐かしい路地と縁台とともに土の匂いが蘇ってきます。
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